6.後産6.後産感動のご対面のあと、程なくして胎盤が引っ張り出される。 後陣痛といって軽い陣痛が起こると聞いていたのだけれど、 会陰切開した部分の痛みと興奮で全然痛みに気がつかなかった。 胎盤が引っ張り出された後、なにやら助産婦さんと先生が慌てている。 どうしたのかたずねてみると、出産後の出血が異常に多いとの事。 通常、出血は500mlを超えると「出血多量」となるのだが、私の場合は 1105mlも出血してしまったのだ。 「現在、お産での死亡の確率はとても少ないけれど、まったくないわけではないし、あなたの場合、出血が非常に多くてこれ以上出血してしまうと輸血をしなければならなくなるから、今日はこのまま一晩、陣痛室で待機してもらいます」 体力消耗による微弱陣痛時での出産と大き目の胎盤が大量出血の原因らしい。 見せてもらった胎盤は840g(平均の約2倍の大きさらしい)とかなりのビックサイズ。 でも、この胎盤が私のかわいい赤子を41週、育ててくれたのだ。 胎盤にも感謝せずにはいられなかった。 一通り処置が終わると、今度は会陰切開した傷の縫合をした。 縫い合わせる前に麻酔の注射を患部にしてから縫うのだが、 縫うのもまた痛い。 そりゃ、出産の痛みに比べれば何てことないが、糸が通る感覚も気持ち悪いし 痛いものは痛いのだ。 家主がいなくなった空気を抜かれた風船のような頼りないお腹には保冷剤がおかれ、 縫合処置の後、子宮収縮剤が膣口付近に注射で打たれた。 一通り処置が終わり、処置のため一時退室していたオットが戻ってきた。 「頑張ったね。ありがとう」とオットが私の手を握った。 朝から私につきっきりで腰をさすってくれたり飲み物を飲ませてもらったり 何度もへこたれそうになっていた私を励ましてくれたオット。 私も感謝の気持ちでいっぱいだ。 そうやって2人で幸せを噛みしめていたその時、 再び、激痛に襲われた。 「痛いッ!!!!!痛いよ!痛いよ!」 ぎゅーッと締め付けられるような腹部の痛み。 額に脂汗がにじむ。 覚悟していない、突然の痛みだったせいで、余計に痛みを感じてしまう。 痛くて痛くて体がばらばらになってしまいそうだ。 私の容態の変化に慌てて助産婦さんが来て、今度はお腹に湯たんぽを置いた。 「子宮を早く収縮させるために本来は1本だけ子宮収縮剤を打つのだけど、あなたの場合出血が多かったから3本打ったの。それで子宮が一気に収縮しちゃったのね」 おいおい!そういうことはあらかじめ言ってくれよ!! お腹を暖めたおかげで痛みはすぐに引いたものの、出産したら痛みとはおさらばだと思っていただけにショックが大きかった・・・ 午前1時00分 心配されていた出血も止まり、分娩台から陣痛室への移動が許可された。 出血多量のため失われてしまった水分を補給するためにブドウ糖の点滴を行う。 陣痛室に移ったものの、興奮のためうまく眠れない。 私は出産をしたのだ。 私は親になったんだ。 これからこの子を育てていかなくちゃいけないんだ。 喜びと期待と責任と不安といろいろな気持ちがごちゃ混ぜになって胸がドキドキする。 その気持ちはオットも同じらしく、心なしか頬が紅潮していた。 別室にある新生児室から産まれたばかりの赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。 ほんとに痛くて、力を使い果たして体もあちこち痛いけど、 終わった後にこんなに幸せな気持ちになれるんだ。 終わった今となっては、「楽しかった」と素直に思えるから 出産ってほんとに不思議だ。 ほたる 誕生 身長:50.3cm 体重:3355g その夜は私たち夫婦が家族になった記念すべき夜になった。 ジャンル別一覧
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